学校教育や職業教育では、知識や技能を積み重ね、より高度な段階へ進むことが重視されます。私たちは、この成長の方向を人生の「縦軸」と捉えています。
一方で、人の可能性は、能力や専門性を高めることだけでは広がりません。
- 異なる世代や価値観を持つ人と出会うこと。
- 知らなかった文化や地域に触れること。
- 新しい活動に参加し、自分なりの役割を見つけること。
このように、人と社会との接点を広げ、参加できる場所や選択できる生き方を増やしていく方向を、私たちは人生の「横軸」と呼んでいます。
問い・役割・関係・生き方
Theory
社会との関係が広がることも、人の成長である。
この考え方は、既存の社会教育・学習理論とも重なります。
エンゲストロームの「水平的学習」や「境界横断」は、一つの組織や専門領域の中だけで学ぶのではなく、異なる集団や活動の境界を越えることで、新しい知識や実践が生まれることを示しています。
また、アマルティア・センらの「ケイパビリティ・アプローチ」は、人の豊かさを、能力や所得の量だけではなく、実際にどのような生き方を選べるかという実質的な自由から捉えます。
さらに、「ブリッジング型社会関係資本」という考え方は、似た人同士の結びつきだけでなく、異なる世代、文化、職業、地域を越えて人と人をつなぐ関係の重要性を示しています。
これらに共通するのは、人の成長を、個人の内側に知識や能力を蓄積することだけではなく、社会との関係や参加の可能性が広がることとして捉えている点です。
Role
社会教育は、参加できる社会の入口をつくる。
社会教育は、学校教育の補習でも、余暇を埋めるためだけの活動でもありません。
普段の生活では出会わない人や文化に触れ、家庭、学校、職場とは異なる関係を持ち、自分にもできる参加の仕方を見つけていく場です。
縦軸が、能力や専門性を「深める」教育だとすれば、横軸は、社会との接続可能性、参加可能性、選択可能性を「広げる」教育です。
深く学ぶことと、広くつながること。
その両方が交わることで、人は既に用意された一つの道を進むだけでなく、自分なりの問い、役割、関係、生き方をつくることができます。