Quartelogueとは何か——二項対立を超えて対話するための「4つの論理」のカバー画像

私たちは、複雑な問題をしばしば「AかBか」「賛成か反対か」「YESかNOか」という二つの選択肢で捉えます。二者択一は論点を明確にする一方で、両方を認める考え方や、問いの前提そのものを疑う考え方を見えにくくすることがあります。

Quartelogue(クオタローグ)は、そうした二項対立を出発点としながら、結論を一方の極だけに閉じ込めず、異なる論理を同じ場に置いて検討するための対話モデルです。本稿では、その定義、成立の背景、活用方法、現時点での課題をまとめます。

Quartelogueという名称

Quartelogueは、英語の「Quarter」と、dialogueの語尾にある「-logue」を組み合わせた造語です。「四つに分けて考えること」と「対話すること」を重ね、日本語では「4つの論理」と表現しています。

これは、あらゆる問いに唯一の答えを与える理論ではありません。発言や考え方の違いを可視化し、対話の参加者が「自分はどのような前提から考えているのか」を確かめるための、実践的な見取り図です。

A、B、止揚解、脱構築解を四方向に配置したQuartelogueの基本図
Quartelogueの基本モデル

4つの位置から問いを捉える

1. 単独解A——Aを選ぶ

問いに対してAの立場を選ぶ考え方です。完全に一方へ振り切れる場合だけでなく、「6対4でAを支持する」といった濃淡を含む判断も、重心がAにあるならここに位置づけられます。

2. 単独解B——Bを選ぶ

Aとは反対側にあるBの立場を選ぶ考え方です。AとBを明確にすることは、対立を煽るためではなく、双方が何を重視し、何を懸念しているのかを理解するための出発点になります。

3. 止揚解——AとBをともに認める

AとBのどちらかを退けるのではなく、双方の価値や条件を認めたうえで、両立、共存、折衷、新たな組み合わせを探る位置です。Quartelogueでは便宜上、哲学で用いられる「止揚(アウフヘーベン)」という言葉を当てていますが、厳密な哲学用語として定義するものではありません。

4. 脱構築解——AでもBでもない

提示された二つの選択肢のどちらにも立たず、「そもそも問いの立て方は適切か」「前提に見落としはないか」「別の軸で考えるべきではないか」と問い直す位置です。既存の問いをただ拒否するのではなく、一度解体し、別の問いや枠組みへ組み替える可能性を含みます。

中心——判断を保留する

図の中心には、「まだ分からない」「情報が足りない」「現時点では決めない」という判断保留を置くことができます。結論を急がず、考えるための時間を確保することも、対話における重要な選択です。

具体例——パンを配るか、我慢を求めるか

たとえば、困窮する人々への対応を「パンを配給する(A)」か「配給せず我慢を求める(B)」かという問いで考えてみます。

  • 単独解A:全員にパンを配給する。
  • 単独解B:配給を行わない。
  • 止揚解:財政や供給条件を考慮し、パン以外の安価な食料を配る。
  • 脱構築解:配給の可否だけでなく、困窮が生じた構造や、問いを設定した側の前提を問い直す。

ここで重要なのは、各位置に機械的な正解を割り当てることではありません。同じ問いでも、条件、時間、当事者、利用できる情報が変われば、説得力を持つ位置も変化します。

このモデルが生まれた背景

日本リベラルアーツ協会では、さまざまな意見や価値観を持つ人が参加する対話の場を継続してきました。自由に話すことの価値を感じる一方、論点を整理するための枠組みや、問いそのものを疑う発言も共存できる場が必要だという課題がありました。

その後、正解のない問いをYES/NOの両面から考える実践や、両方の立場を理解したうえで自分の考えを組み立てる「ディベート対話」を重ねました。Quartelogueは、そこで扱ってきた両極の理解と止揚に、問いの前提を崩す脱構築の位置を加えたものと捉えられます。

学校教育の現場で、ディベートの意義と同時に、準備、ルール、実施時間の難しさを実感したことも背景にあります。Quartelogueは、ディベートを置き換えるものではなく、その一部の価値をより短時間で体験し、対話へ接続するための補助線として構想されました。

ワークショップでの基本的な進め方

  1. 問いを設定する:複数の立場から考えられる問いを選びます。
  2. 個人で考える:他者の意見を聞く前に、自分の反応と理由を整理します。
  3. 位置を選ぶ:現在の考えが図のどこに近いかを示します。
  4. 理由を述べる:結論だけでなく、その位置を選んだ背景や条件を共有します。
  5. 比較・検討する:各主張の説得力、前提、見落としを参加者で検討します。
  6. 立場を離れて対話する:最後は勝敗から離れ、考えがどう変化したかを話します。

目的や参加者に応じて、他者の意見を受けた反駁の時間を設けたり、聞き手による投票を行ったりすることもできます。重要なのは、図のどこにいるかを競うことではなく、異なる論理の存在を理解し、自分の考えを更新できる状態をつくることです。

教育的な可能性

Quartelogueには、意見や概念を整理すること、二項対立の外側を可視化すること、複雑な思考を比較的単純な図で共有することなどの可能性があります。

特に、探究学習、哲学対話、市民参加型のワークショップ、組織内の意見交換などでは、結論だけでなく、問いの前提や判断の過程を共有するために活用できます。一方で、実践事例はまだ十分ではありません。教育的な効果については、今後の実践と検証を通じて確かめる必要があります。

Quartelogueの4領域をさらに12領域へ細分化した検討図
各位置の境界や濃淡を、さらに細かく検討することもできます

限界と注意点

  • 万能な分類ではありません。あらゆる問いや発言を4つに収めることを目的としていません。
  • 境界は固定されません。止揚解と脱構築解の差が曖昧な場合や、複数の位置が重なる場合があります。
  • 哲学的な厳密性を主張するものではありません。用語は対話実践のために便宜的に使用しています。
  • 定義は発展途上です。論理学、哲学、TOK、教育実践、各種思考法からの検討と反証が必要です。
  • 類似する先行事例を否定しません。本モデルは独自の実践から考案したものですが、類似研究を網羅的に調査したものではありません。

人間の思考は、一枚の図で完全に捉えられるものではありません。複数の位置を重ね合わせた考え、別の軸から生じる考え、言葉や分類にまだ届かない感覚もあります。Quartelogueは、それらを排除する枠ではなく、対話を始めるための暫定的な地図です。

問いを閉じず、対話をひらくために

二項対立をなくすことがQuartelogueの目的ではありません。AとBの違いを明確にしたうえで、両立の可能性、問い直す可能性、判断を保留する可能性を同じ場に置くこと。そのことによって、異なる価値観を勝敗だけで終わらせず、次の問いへつなげることを目指しています。

日本リベラルアーツ協会では、Quartelogueを用いた対話やワークショップの実践、教育現場や地域活動への応用を検討しています。実施や共同研究、授業・研修への活用については、お問い合わせください。

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本稿は、2024年4月3日に公開した日本リベラルアーツ協会公式note「Quartelogueについて」をもとに、定義と実践方法を整理し、公式Webサイトの決定版として大幅に加筆・再構成したものです。

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