京大100人論文を見学して——問いが人と分野をつなぐ場のカバー画像

こんにちは。日本リベラルアーツ協会代表の船岡です。

2022年、東京・丸の内で開催された「丸の内100人論文」を見学しました。当時の協会はまだ任意団体として活動しており、外部の催しに足を運びながら、問いを通じて人が出会う場のつくり方を模索していました。本稿は、そのときに感じたことを現在の視点から整理した過去の個人ブログです。

100人論文とは

100人論文は、教授、准教授、助教、博士課程の学生など、職位や専門の異なる研究者が、自らの研究の根にある問いを掲示する企画です。来場者は、気になった問いへ付箋でコメントを残します。

論文の完成された成果だけを見せるのではなく、研究者が何に引っかかり、何を知りたいと思っているのかを共有する。問いを介することで、所属や専門を強く意識せずに交流できる仕組みになっていました。

京都大学 学際融合教育研究推進センターによる企画紹介 →

丸の内100人論文の会場に掲示された研究者の問い
会場には、分野を越えた多様な問いが並んでいました

67の問いが並ぶ空間

会場には67の問いが掲示されていました。倫理、論文を書くという営み、古典文学、子連れで働くこと、ICTと日本文化、ふるさと、製品設計、内的発話、方言、生き物の再生など、扱われるテーマは実に多様です。

一見すると遠く離れた研究でも、「なぜそれが気になるのか」という問いの形で示されると、自分の経験や関心との接点を見つけられます。専門知識を持っていない人でも、付箋に考えを記し、研究者の問いへ参加できる。この開かれ方に強く惹かれました。

地域と学問をどうつなぐか

私が参加したトークセッションのテーマは、「地域からの便り——地域×学問で何ができる?」でした。

地域創生はよく使われる言葉ですが、そもそも誰が地域創生を望んでいるのか、すべての地域が同じ意味で活性化すべきなのか、外部から入る取り組みが地域の性格と合っているのか。議論は、施策の方法より前にある問いから始まりました。

ビジネスの側からも、受け入れる地域に土壌がなければ企画が浮いてしまうこと、地域ごとに人の出入りや関係性の特徴があること、外から何かを持ち込めば必ず成功するわけではないことが指摘されていました。

「自分の地域だけがよければ、それで幸せなのか」「イノベーションという言葉だけが先行していないか」「そもそも何のために働くのか」。学問には、当たり前になった目的をいったん立ち止まって問い直し、別の見方を差し出す力があるのだと感じました。

丸の内100人論文で行われた地域と学問に関するトークセッション
「地域×学問」をテーマにしたトークセッション

完成した答えより、問いを共有する

研究というと、論文や発表として完成した成果を思い浮かべがちです。しかし、人を動かすのは、完成した答えだけではありません。まだ答えがないからこそ考えたい問い、長い時間をかけて追いかけたい問いにも、人をつなぐ力があります。

問いが掲示され、誰かのコメントが重なり、別の分野との接点が生まれる。その過程自体が、研究を社会へひらく一つの方法になっていました。

当時、いつか日本リベラルアーツ協会でも、このように多くの問いが交差する場をつくりたいと思いました。規模はまだ及びませんが、その後の卒論・修論発表会、研究支援、対話型の企画には、この見学で受け取った視点がつながっています。

TMIPによる丸の内100人論文のレポート →

関連するページ


本稿は、2022年5月15日に公開した日本リベラルアーツ協会公式noteの記事をもとに、代表・船岡佳生の過去の個人ブログとして加筆・再構成したものです。

Continue Exploring

Related Programs

参加、共同企画、研究・教育での連携など、内容が固まっていない段階からご相談いただけます。

お問い合わせ