
社会課題に向き合うとき、制度や事業の知識だけで十分なのでしょうか。異なる文化的背景を持つ人々が暮らす社会では、歴史、言語、倫理、経済、地域コミュニティなど、複数の視点を行き来しながら問題を捉えることが求められます。
2021年5月30日、日本リベラルアーツ協会は、オンライン講演会「社会起業家におけるリベラルアーツの重要性——外国人政策の現場から」を開催しました。本企画は、「リベラルアーツとは何か?」に続く第2回の講演会として実施したものです。
開催概要
- テーマ
- 社会起業家におけるリベラルアーツの重要性——外国人政策の現場から
- 日時
- 2021年5月30日(日)20:00〜21:30
- 開催形式
- Zoomによるオンライン開催
- 講師
- 田村 拓氏(EDAS〈イーダス〉理事長、青山学院大学 社会情報学部 プロジェクト教授)
外国人政策の現場から考える
講師には、EDAS創設者の田村拓氏をお迎えしました。EDASは、日本で暮らす外国人と、受け入れる企業や地域社会をつなぎ、相互理解と日本語によるコミュニケーションを支える活動に取り組む団体です。
外国人政策は、労働力や制度の問題だけではありません。生活者としての尊厳、言語の壁、文化的な違い、地域との関係、企業の責任など、多くの論点が重なっています。本企画では、そうした現場で活動する社会起業家の経験を通じて、リベラルアーツが実践にどのように関わり得るのかを考える機会を設けました。
講師プロフィール
田村 拓氏
EDAS(イーダス)理事長。青山学院大学 社会情報学部 プロジェクト教授。
東京大学経済学部卒業、ニューヨーク大学経営大学院修了(MBA)。NTT、NTTデータを経て、SCSK執行役員、クオカード常務執行役員、CSKホールディングス常務執行役員などを歴任。2016年にEDASを設立し、就労を目的に来日する外国人と企業・地域社会をつなぐ活動に取り組んでいます。NPO法人CANVAS評議員、一般社団法人日本外国人材協会理事も務めています。
EDASという名称には、「Everyone is Different.(みんな違う)」と「All people are the Same.(みな同じ)」という二つの意味が込められています。違いを認めることと、同じ人間として向き合うこと。その両方を手放さない姿勢は、リベラルアーツが目指す複眼的な理解とも深く重なります。
社会起業とリベラルアーツ
社会起業では、目の前の課題を解決する実行力が欠かせません。同時に、「誰にとっての課題なのか」「解決によって別の困難を生まないか」「制度の外側に取り残される人はいないか」と問い続ける視点も必要です。
文学や歴史、哲学、社会科学、自然科学などの知を横断するリベラルアーツは、すぐに一つの正解を与えるものではありません。しかし、問題を単純化せず、異なる立場を理解し、自らの前提を点検するための土台になります。社会的な事業を継続するうえで、この「問い直す力」は実務と切り離せないものです。
開催を振り返って
日本リベラルアーツ協会にとって本企画は、リベラルアーツを教養として語るだけでなく、外国人政策や社会起業という具体的な現場と接続して考える初期の実践となりました。
異なる背景を持つ人々がともに暮らすためには、制度設計だけでなく、言葉の使い方、他者理解、地域での関係づくりが必要です。分野を横断して問いを立てることと、現場の経験から考えを更新すること。その往復を、今後の活動でも大切にしていきます。
関連するページ
本稿は、2021年5月26日に公開した日本リベラルアーツ協会公式noteのイベント告知をもとに、開催趣旨と記録を整理し、公式Webサイト向けに加筆・再構成したものです。
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